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知識・Tips
2025年03月10日
「柔」の発想で高耐久性・広範な接着性を実現した弾性接着剤「スーパーX No.8008」

はじめに
ものづくりの世界では、金属とプラスチック、柔らかい材料と硬い材料の組み合わせなど、異素材接合のニーズが高まっている。自動車業界においては、地球温暖化・環境汚染対策の一環としてハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)の普及が進み、脱炭素社会を目指す動きが活発化している。現状、HVやEVは燃費向上のため車体の軽量化・耐久性向上が課題となっており、鉄やアルミといった金属部品の一部をエンジニアリングプラスチック(エンプラ)部品に置き換える複合部材の動きが進んでいる。複合部材では各部材の特性を同時に利用できる優位点があるが、二つの素材の間には接合界面が存在するため、接合力や気密性が必要とされる場合には技術的な難易度が高くなる。
セメダインでは、これまでの「剛」の物性を高める“硬くて強い接着剤”という考えを180°転換して、“しなやかで剥がれにくい”「柔」の発想で高耐久性を実現した弾性接着剤「スーパーX」を開発し、このようなトレンドに合わせた技術開発を行ってきた。本記事では、各種金属、プラスチック、エンプラ、セラミックなど広範囲の材料に良好な接着性を示す「スーパーX No. 8008」を紹介する。
エンジニアリングプラスチックの種類と特徴
プラスチックは加熱により溶融し、成形が可能となる。成形し冷却固化した後に再加熱すると溶融する熱可塑性樹脂と、加熱により三次元硬化し冷却後は再加熱しても溶融しない熱硬化性樹脂とに分類される。その中の熱可塑性樹脂は、耐熱性、機械的特性、経済性などにより、汎用熱可塑性樹脂、汎用エンプラ、スーパーエンプラに分類される(図1)。エンジニアリングプラスチック(エンプラ) とは、機械的強度や耐熱性を向上させたプラスチックで、自動車部品や機械部品、電気・電子部品のような工業用途に使用されている。さらにスーパーエンプラは、汎用エンプラより耐熱性が上昇し、各種特性も非常に優れており、成形加工技術の進歩とともに汎用性が高まり、さらに高性能な部材として自動車部品等へ使用範囲が広がっている。

「スーパーX№8008」の特長
スーパーXは、接着剤の理想の概念と言われている「粘着接着」・「弾性接着」・「無溶剤」という三大特長を備えた世界初の一液常温速硬化型接着剤である。変成シリコーンポリマーを主成分とし、空気中の水分を吸収することにより反応硬化(図2)し、粘着状態から接着状態へ変化する。粘着状態では、接着塗布面がテープの糊面のような状態に変化しており、この時点で貼り合わせると仮止め不要の貼り合わせが可能である(図3)。

図2. 変成シリコーン反応機構

図3. 粘着状態と貼り合わせ可能時間
異素材接合を可能にする「広範な接着性」
接着性能として、各種金属、プラスチック、セラミックなど広範囲の材料に良好な接着性を示し、またそれらの組み合わせも接着可能である。特にエンプラやスーパーエンプラに対しても良好な接着性を有している。そのことから、軽量化のための素材の見直しや新素材の検討など、設計の可能性を広げることが可能である。

図4. 各被着材に対する接着性 ※ 拡大画像はこちら
強靭かつ柔軟な「耐久性」
弾性接着剤の特長である”強靭性”と”柔軟性”を併せ持ち、金属とプラスチックのような熱膨張係数の異なる異素材接着用途や、電子機器や自動車関連などの冷熱繰り返しに対する耐久性が必要とされる用途に最適である。
その”強靭性”と”柔軟性”は、異素材間の熱膨張係数が違う事によって発生しうる応力集中を緩和するため、急激な温度変化においても剥がれずに接着し続ける事が出来る(図5)。また、低温(-40℃)から高温(120℃)までの幅広い温度領域に対応し、繰り返しのヒートショックに対しても接着力を保持している(図6)。

図5. ヒートショック試験

図6. 繰り返しヒートショック試験
設計の可能性を広げる「多用途」
工業用接着剤として多様な組み合わせにおいて数多くの実績があり、様々な用途、環境で使用されている。「一液」・「無溶剤」・「低臭」・「常温湿気硬化」タイプのため、混合の手間もなく、作業環境もクリーンで、熱源も不要である。電子部品に悪影響を及ぼす低分子シロキサン化合物を含まず、接点障害を引き起こすことがないことはシリコーン系接着剤とは異なる特長の一つである(図7)。また、3色のカラーバリエーションや作業性に合わせた低粘度タイプがあり、あらゆる設計を自由にする。

図7. 低分子シロキサンによる接点障害
その他のスーパーXシリーズの紹介
- 電気部品製造に欠かせない難燃性接着剤「SX720シリーズ」
- シリーズ最速の速硬化型「スーパーXG No.777」
- 不透明な材料も接着可能なUV硬化型弾性接着剤「SX-UVシリーズ」
- プライマーレスで難接着素材のポリプロピレンを接着できる機能性弾性接着剤「SX-PPK1000(EXP)」
- 高い放熱特性を有し、グリスのようなポンプアウトの心配もない放熱性接着剤「SX1000シリーズ」
- 優れた導電性を有し、室温から硬化可能で、硬化後は柔軟性のある一液低温硬化型フレキシブル導電性接着剤「SX-ECA48」
最後に
「柔」の発想で高耐久性・広範な接着性を実現した弾性接着剤「スーパーX」は、エンプラやスーパーエンプラに対しても良好な接着性を有しており、金属部品の置換えによる軽量化や機能・性能の向上、異種部材の接合、自動化塗工・組み立てによるコスト削減等、様々なニーズの課題解決を可能とし、新たなものづくりに貢献できる接着剤である。
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